伝えていきたい和食文化
クォリーヴァ 主宰 管理栄養士
地中海食研究家 貴堂 明世
そろそろお正月の準備を考える時期となりました。おせち料理はその土地でとれた食材を豊作の感謝を込めて神様にお供えしたことが起源で、弥生時代にまで遡るそうです。食材や料理に無病息災や五穀豊穣など様々な意味があることは皆さまもよくご存じ。そのほか江戸時代に祝日となって定着した「五節供」(現在は節句)があります。七草の日(1/7)には七草粥、桃の日(3/3)にはちらし寿司、蛤のうしお汁、菖蒲の日(5/5)には柏餅、ちまき、七夕の日(7/7)には五色そうめん、滝川豆腐町 注1)、菊の日(9/9)にはなすや菊の和えもの、栗ご飯などのご馳走をお供えし、皆で分け合っていただくことで家族や友人の無病息災を願うことが本来の意義です。料理には春夏秋冬の季節感のある食材が使われていましたが、便利さの追求、個食化や食の欧米化とともにこれらの伝統も薄れつつあります。このまま保護しなければ消滅の危機に瀕していると判断され、和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。その特徴として(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重、(2)健康的な食生活を支える栄養バランス、(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現、(4)正月などの年中行事との密接な関わりがあげられています 注2)。特に(2)の日常的に健康を支える献立の基本である一汁三菜の形が崩れ、単品メニューや過剰な動物性脂肪を含む料理が好まれる傾向は、長い目で見ると健康寿命にも影響する懸念があります。
さまざまな事情で家庭での食事作りが難しくなってきているからこそ、外食や宅配食で和食の伝統的な良さを生かした、しかも健康的な食事の提供という役割が今まで以上に大きくなってきていると思います。
注1) | 豆乳を寒天などで固めところてん突きで細く突き出した白い麺状のもの。天の川を表現。 |
注2) | 「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されている:農林水産省(maff.go.jp) |